卒業・修了後の進路

学部を卒業する学生の70%は大学院に進学しさらに高度なレベルの教育を受けます。卒業・修了生は、国内外で公共性の高い様々な仕事に従事する、高度な専門技術と総合的な判断力を兼ね備えたエンジニアとして活躍しています。代表的な就職先として、官公庁、公益企業(鉄道・運輸、電力、ガス)、建設業、各種製造業、情報・物流産業、不動産・保険業、調査・設計・まちづくりコンサルタント、大学・研究機関・シンクタンクなどが挙げられます。国内だけでなく世界を舞台に、安全で豊かな市民生活の基盤づくりに貢献しています。


国際都市シンガポール

主な就職先

  • 国土交通省
  • 防衛省
  • 特許庁
  • 兵庫県
  • 東京都
  • 大阪府
  • 京都府
  • 神戸市
  • 大阪市
  • 西日本旅客鉄道
  • 東海旅客鉄道
  • 東日本旅客鉄道
  • 九州旅客鉄道
  • 阪急電鉄
  • 阪神電気鉄道
  • 近畿日本鉄道
  • 南海電鉄
  • 京阪電気鉄道
  • 東京急行電鉄
  • 西日本高速道路
  • 中日本高速道路
  • 阪神高速道路
  • 首都高速道路
  • 本州四国連絡高速道路
  • 関西エアポート
  • 関西電力
  • 東京電力
  • 大阪ガス
  • 東京ガス
  • 関西電力
  • 東京電力
  • 東邦ガス
  • 西日本電信電話
  • 鹿島建設
  • 清水建設
  • 大林組
  • 大成建設
  • 竹中土木
  • 鴻池組
  • 奥村組
  • 五洋建設
  • 安藤・ハザマ
  • 三井住友建設
  • NIPPO
  • 日建設計シビル
  • パシフィックコンサルタンツ
  • 日本工営
  • 建設技術研究所
  • 中央復建コンサルタンツ
  • 復建調査設計
  • 応用地質
  • 建設工学研究所
  • 電力中央研究所
  • 港湾空港技術研究所
  • 鉄道・運輸機構
  • 原子力研究開発機構
  • 神戸製鋼所
  • 新日鐵住金
  • JFEエンジニアリング
  • Hitz日立造船
  • 野村総合研究所
  • NTTデータ

卒業生からのメッセージ

国土交通省・新村氏

国土交通省河川局河川計画課 国際調査係長
新村貴史 氏(2001.3 学部卒, 2003.3 修士課程修了)

皆さん、「土木(Civil Engineering)」というとどのようなイメージがあるでしょうか。人によってイメージは様々かもしれませんが、我々の社会生活に最もと言っていいほど密接な関係があります。朝起きて家から学校に行くまでのことを想像して下さい。蛇口をひねれば上水道を通ってきた水が出るのも、トイレに出したものが下水道に流れていってくれるのも、雨の日でもぬかるまないように舗装された道路を自転車で走れるのも、電車が脱線したり激しく揺れたりせずにきちんと走るのも、大雨が降っても橋が流されずに川を渡れるのも、全て土木に関係のあることです。これだけではありません。船が座礁せずに着岸できる港や、飛行機が離着陸するための空港、都市と都市を結んでネットワークを形成する高速道路なども、全て土木という学問の上に成り立っているものです。

私が土木を勉強しようと思ったのは、この「多くの人の社会生活を支えている」ということに魅力を感じたからです。

土木はそのカバーする範囲が広いが故に、それに携わる者には幅広い知識を要求します。大学で幅広く物事を学ぶのはもちろんのこと、社会に出てからも学ぶことを続けなければなりません。これを勉強する上でのコツを一つ挙げるとすると、常に「なぜ?」と考えることだと思います。「なぜ?」を常に持ち続け、何に対しても探求心を持って取り組み、またそれを解決するための方策を自分で考え出す。言葉で言うと簡単ですが、これを実践する力を、時には友人や先生にサポートしてもらって養うことが出来ると良いのではないでしょうか。

現在、私は国土交通省に勤めていますが、土木技術者としての社会に対する使命、大学で学んだことを実践の中でいかに活かすかということを常に考え、常に挑戦する心で仕事に取り組んでいます。

JR 東海・中川氏

東海旅客鉄道株式会社 総合技術本部 中川 正樹 氏

神戸大学を卒業後、 JR東海に入社した私は、自分の希望通り東海道新幹線を支える仕事にずっと携わっています。ここで「支える仕事」と書きましたが、その中で最も大切なのは"安全を支える仕事"です。新幹線がレールの上を走るのは当たり前とも思えますが、レール1本の幅はたった6cm 程度、そのレール2本の上を270km/hで走り抜ける新幹線の安全を支える仕事はやりがい十分です。入社してからこれまでに、実際に新幹線の保線の現場で工事の監督業務に携わっていたことが何年かあります。新幹線の保線工事はすべて真夜中に行われるのですが、レールを交換したり、線路に敷かれてある石(バラスト)の交換を行うといった大きな工事が無事に終了した翌朝、目の前を全速力で走り去る新幹線を見るのは、「この仕事をしていて良かった」と思える瞬間でもあります。

また走行しながら線路のゆがみや振動を測定したり画像を記録したりして、新幹線の安全の根幹を確認する専用の新幹線(ドクターイエローという愛称で呼ばれています)がありますが、その新規開発の仕事に従事していたこともあります。270km/hで走りながら、25cm間隔で線路の状態をミリ単位で把握するという世界でも例のない技術開発を行うタイミングに接し、またその機会を与えてもらったことに感謝すると共に、無事完成させることができたことにとても満足しています。

そして、このような仕事を入社後10年間で経験してき今の私の仕事は、新しい技術の開発です。"より高いレベルの安全性・快適性"を目指し、鉄道を支えるさまざまな専門分野の人達が、会社の研究施設に一同に集まり、新しい技術を産み出しています。私も今はその一員として、例えば"新幹線がもっと揺れなく走るためには線路はどう改良すればいいの?"や"大きな地震が来ても新幹線を安全な状態で止めるにはどのような線路にすればいいの?"などについての研究を行っています。

入社から10年が過ぎ、新幹線を支えるさまざまな仕事を行ってきましたが、それを支えるのは自分のやる気と大学で学んだ力学や材料学などの基礎知識、そしてその後の自己研鑽だと感じています。そういう意味で、大学での6年間は重要かつ有意義な期間であったと思います。

電源開発・浅井氏

電源開発(株) 浅井 聡 氏(H6.3修了)

私の会社は卸売電気事業をコアとする電力会社です。
入社の動機は「社会貢献できる仕事がしたい。どうせなら何か大きなことが出来そうな会社が良い。」という漠然とした希望からでした。

入社後最初に配属された箇所では水力発電所の新設、増設の計画を担当しました。東京での勤務ですが、現場へ行って道なき道を踏み分けて計画地点を踏査したり、時には貴重鳥類の調査をしたりもしました。次に行った水力発電所の保守現場では台風の中でのダム放流や、水路トンネルの抜水点検、それからヘリコプターでの水系巡視も経験しました。
二つ目の現場勤務となった日本最大級の火力発電所新設地点では機電・建築工事と複雑に絡んだタイトな工程を遵守しつつ、高品質を確保して構造物を造り上げることに苦心しました。

現在入社10年を過ぎ、東京勤務となって従事している原子力発電所の新設計画においては、土木構造物の設計・施工計画・監理に至る全ての段階を網羅し、プロジェクト推進の一翼を確実に担うべき立場としての働きを求められています。少々きついし、プレッシャーもありますが、入社当時に抱いた漠然とした思いを具現できる仕事であるということが自分の中でのモチベーションになっています。

巨大プロジェクトには時として非常に長い時間がかかります。その完遂を目指した先人達の英知と苦労を併せて引き継ぎ、沢山の仲間と力を合わせて課題を解決していき、完成に漕ぎつける。その感激はとてつもなく大きく、そしてそれを分かち合える仲間がいる。野暮ったいですか?いいもんだと思いますよ、土木の世界。

熊谷組・重村氏

海外での「土木」工事 (株)熊谷組国際支店
重村誠一 氏 (1992年卒業、C40回)

神戸大学土木工学科/神戸大学大学院工学研究科を卒業・修了して建設業界に入りましたが、大学進学時に土木系学科を「自分の生まれ育った街を住み良い所にしたい」という理由で選んだ私に、建設業の意義を改めて認識させてくれたのは海外への転勤でした。1999年よりタイ国バンコクでの同国初の地下鉄プロジェクトに参加しましたが、一度も海外に行った事が無かった私には異なった習慣や考え方は新鮮なものでした。中でも特に驚いたのは海外では土木技術者はCivil Engineerという名称で呼ばれ、その社会的地位も思ったより高かった事です。トンネルの貫通(バンコク/タイ)私はバンコクから始まって台湾の台北市、そして現在はオーストラリアのパース市と3カ国目の地下鉄プロジェクトに携わっていますが、英語圏のオーストラリアでは特にCivil Engineerという職業がしっかりと世間に認められています。それは日本で言う土木工事の殆どが社会基盤の整備事業に関わっており、Civil Engineerには工事遂行はもちろん周辺環境や経済効果も配慮したマルチな活躍が求められるからです。

先日開業したバンコクの地下鉄に乗車する機会がありましたが、他の乗客が日常の足として地下鉄を使っている様子を見て感慨深いものがありました。もちろん工事を無事完成させる事が出来たのは、初めての海外経験でうまく要領を得ない私の説明や指示を良く理解してくれた現地スタッフや作業員達のおかげでしたが、日本の土木技術者として海外に自分の足跡を残していく達成感は格別ですし、日本以外の何処かの国を住み良い町にしていくというのも土木技術者/Civil Engineerならではの仕事冥利だと実感しています。

(株) 国際開発システム・宮脇氏

(株)国際開発システム プロジェクト部 宮脇信英 氏
学部:平成9年(1997年)~平成14年(2002年)
・修士:平成14年(2002年)~平成16年(2004年)

主な業務内容は、海外での港湾インフラの整備計画や港湾管理者の管理・運営に関する計画を立案し、関係機関と協議を重ねながら調査を進め、これらを報告書にまとめることです。仕事のほとんどが国際協力関連であり、プロジェクトの主な取引先は国際協力機構 (JICA) や国際協力銀行 (JBIC) 、アジア開発銀行 (ABD) 、国土交通省などです。現在私は入社 3 年目を迎えたところですが、これまでに中東のオマーン国、南米のブラジル国へ出張し、現地で調査団員が円滑に仕事を行えるよう業務の調整を図りながら、調査の補助を行ってきました。これら 2 つは大きいプロジェクトだったこともあり、経済・財務分析や環境の専門家と仕事をともにし、土木以外でも多くの知見を積むことが出来ました。

私が現在の仕事を選んだきっかけは主に 2 つの理由があります。一つは大学時代の友人との付き合いでアジアをはじめとする海外に目が向き、バックパックを背負い一人旅をし、日本にはない魅力に惹かれたことです。もう一つは大学での研究 ( 国際海上輸送 ) を活かした仕事がしたいと考えたためです。神戸大学は、日本や世界の潮流を視野に入れた先生方のご指導と、これに強い興味を抱く学生が多数在籍する環境にあると思いますし、だからこそ現在この仕事をしている自分もあると思います。

皆さんも、長くも短くもある 4 年間を充実した日々と出来るよう大学選びを十分に検討し、そこへの合格を目指し勉学に励んでください。

また、仕事からは離れますが、オマーンではサッカー W 杯 1 次予選の日本対オマーン戦を現地で観戦する機会に恵まれ、ブラジルでは週末を利用し、現地のスタッフとともにカーニバルに参加することもできました。上の写真はそのときの様子 ( 日本 vs オマーン @ オマーン国マスカット市 ) を撮影したものです。

オリエンタルコンサルタント
・吉田氏

オリエンタルコンサルタント 吉田 郁美 氏 (2005.3 修士課程修了)

2005 年に神戸大学大学院を卒業し、現在、建設コンサルタント会社で働いています。就業先では、主に交通・都市計画におけるユニバーサルデザイン、バリアフリーなどに関連する仕事に携わり、人にやさしいみち・まちづくりを目指して日々奮闘しています。

大学時代は、土木事業の経済効果について研究していました。研究室の窓から神戸のきれいな夜景を毎日のように眺めていたのを今でも思い出します。残念ながら、研究内容に直結した仕事は今のところありませんが、研究や学生生活で得たものは"今"に活かされています。それは、専門知識や勉強方法だけでなく、人との接し方、お酒の飲み方、休暇を利用して行ったアジア旅行で培われた忍耐力など様々です。

また大学時代の友人とは、今でもよく一緒に遊び、冗談ばかり言い合っています。専門知識を身に付けることももちろん大事ですが、このような友人を得たことや自分の時間を過ごせたことが大学時代に得た貴重な財産だと感じています。

(株)ニュージェック国際事業本部
・小林六郎氏

私の海外プロジェクト経験 (株) ニュージェック国際事業本部
小林六郎 氏(1972年卒業)

神戸大学土木工学科/神戸大学大学院工学研究科から建設分野の総合コンサルタントに入社して以来、30余年の歳月の中で、国内外の数多くの業務、プロジェクトに関ってきました。

初めての海外プロジェクトへは30歳の時で、インドネシア国スラウェシ島での水力開発計画プロジェクトで、見るもの聞くもの新鮮で、ジャカルタのすざましい車の量と炎天下での多くの人のエネルギッシュな別世界に飛び込んだような気がしました。出力124MWの流れ込み式水力発電所を建設するための水理模型実験が担当でした。インドネシア国電力公社の研究所の敷地内に水理模型実験棟を建設することから始まり、循環水路の設計、実験水路の設計等をハンドブック、電卓を片手に図面の作成が続きました。また、詳細な実験計画の作成、実験用模型の設計、測定用の機器材の調達、輸出手続等を済ませて現地に乗り込みました。20人を超える若いインドネシアの技術達と一緒になって自分のそれまでの知識、経験を120%要求される状況の中で進めることとなりました。実験は移動床で十数時間に及ぶ給砂も人力で少しずつ上流から投入したのですが、ある時、計測時間になっても計測担当者がいないことがありました。インドネシアでは大半の人がイスラム経の国で礼拝に行っているとのこと、驚くこともありました。数ヶ月のうちには実験の進捗も軌道に乗り、予定より少し遅れて所定の結果を出すことが出来ました。

1999年から始まり、現在も関っている河川関連プロジェクトとして、ラオス国での河岸浸食対策事業があります。日本の河川伝統工法の技術を海外では始めての大陸 河川であるメコン河に適用したのです。一年のうち雨期・乾期で水位が 10m 以上も変動し、川幅は首都ビエンチャン周辺で約700mあり、日本の河川と様相が異なります。そこはメコン河が中国、ラオス北部の山岳地帯を流下後、ビエンチャン平野で河道勾配が緩くなり、古くから河道変遷が 繰り返されてきた所で人が集まり都市が形成されています。人間の力でこれらうまく治める知恵が河川伝統工法にあったのです。粗朶(広葉樹の雑木)と石材を用いて、地元の人たちの人力により河岸侵食を食い止めるのです。こうした技術はラオス国の実状に適した持続可能な河川技術としてラオスの人たちに今、確実に伝承されています。

神戸市下水道河川部・畑恵介氏

水環境の創生”下水道プロジェクト X ”
-神戸市下水道河川部畑恵介計画課長(1980年修士課程修了)に聞く-

《畑恵介さんのプロフィール》

1956年、神戸生まれ。1980年神戸大学大学院工学研究科修士課程を修了後、神戸市に採用。下水道局施設課、工務課、日本下水道事業団大阪支社、建設局下水道河川部計画係長、建設局中央水環境センター管理課長などを経て、2004年4月より現職。市役所入庁以来25年間、下水道一筋。趣味は、月1ゴルフと実家の畑仕事。

下水道の役割とは?

①生活環境の改善:水洗トイレで快適な生活、ドブのない美しい街づくり

もしないと?:台所でお皿を洗えない、トイレに行けない、お風呂に入れない・・・文化的生活は不可能!

②浸水の防除:ひとの生命・財産を守る

もしないと?:梅雨や台風によって町中水浸し・・・安眠できません!

③うつくしい川や海を取り戻す:下水道の普及で川・海がきれいになっている

もしないと?:川も海も汚れます・・・水辺を楽しく過ごせません!

④資源の活用:下水からエネルギーや様々な製品を作り出します

人体にたとえれば、下水道管網は都市の 「静脈」 、下水処理場は 「腎臓」 です。
なければ都市は生きることができません。

畑課長がこれまでに携わった仕事
  1. 下水道計画:長期計画、まちづくり、環境アセスメント
  2. 下水道の建設:下水処理場・下水道管渠の設計と建設工事、阪神大震災後の復旧
  3. 技術開発:水質浄化技術の開発、下水汚泥(下水を濾しとった泥)の有効利用
  4. 施設の維持管理:調査・点検や市民へのサービス
  5. 広報、啓発:水環境フェア、出前トーク
畑課長にとって印象的な仕事

①岩盤地帯に下水道幹線を作る ⇒ 土木学会技術賞受賞!

神戸市北区の岩盤地帯で下水道幹線の建設においては、市街地で発破による掘削が不可能であった。この難課題を克服するためにTBM( ンネル・ ーリング・ シン)を実用化し、掘り進んだ。ゼネコン、掘削機メーカー、コンサルタントとの"プロジェクトX"が実を結び、技術者冥利だったそうです。

②阪神淡路大震災からの下水道の復旧、復興

1995年1月17日の阪神淡路大震災が、下水道施設にいかに大きな被害を与えたかはあまり知られていません。しかし、被害総額:560億円、東灘下水処理場の約100日機能停止などとんでもない被害がありました。生活を支える基盤施設には下水道のような地下構造物が多く、地上の被害に比べると印象は薄いかもしれません。しかし、用便・入浴・炊事など生活の水回りが不可能な状況を想像してみてください。下水道被害が深刻な問題をもたらしたことは被災地域のみなさんには今も記憶に新しいできごとです。

畑さんをはじめ担当の技術陣は不眠不休で奮闘し、驚異的なスピードで5月1日に応急復旧を達成しました。震災は、下水道施設の耐震化、水質処理の高度化、下水道資源の有効利用など多くの課題と教訓を私たちに残しました。

これからの下水道

①膨大な施設と維持・管理とリニューアル

都市の静脈「下水道」は膨大な距離で張り巡らされ、昼夜休むことなく下水処理場は稼働しています。時価1兆円にも相当する下水道システムを1日たりとも故障することなく稼働させるために、施設の維持管理(図-1)と更新は不可欠です。


図-1 老朽化した下水管内

②水質をよりきれいに

赤潮など汚染に悩む大阪湾・瀬戸内海( 図 -2 )をきれいにするためには、下水をよりきれいに処理する必要があります。また、下水処理水でせせらぎなど人工的な水辺空間をつくり、水環境を保全・創生する試みもあります。

多くの下水道技術者が日夜研究開発を進めています。

③下水道システムの機能・安全性の向上

阪神大震災の教訓の一つとして、市民のくらしや産業活動を災害から守るために下水道システムの耐震化(地震に強い下水管・処理場の建設)や下水処理場のネットワーク化(処理場どうしを連結・ネットワーク化して、一つの処理場がつぶれても他の処理場がバックアップし、全体として機能が停止しないようにすること、図- 3)が行われています。


図-2 メリケン波止場の赤潮

図-3 下水処理システムのネットワーク化工事

1999年から始まり、現在も関っている河川関連プロジェクトとして、ラオス国での河岸浸食対策事業があります。日本の河川伝統工法の技術を海外では始めての大陸 河川であるメコン河に適用したのです。一年のうち雨期・乾期で水位が 10m 以上も変動し、川幅は首都ビエンチャン周辺で約700mあり、日本の河川と様相が異なります。そこはメコン河が中国、ラオス北部の山岳地帯を流下後、ビエンチャン平野で河道勾配が緩くなり、古くから河道変遷が 繰り返されてきた所で人が集まり都市が形成されています。人間の力でこれらうまく治める知恵が河川伝統工法にあったのです。粗朶(広葉樹の雑木)と石材を用いて、地元の人たちの人力により河岸侵食を食い止めるのです。こうした技術はラオス国の実状に適した持続可能な河川技術としてラオスの人たちに今、確実に伝承されています。

④浸水しないまちづくり

下水道のもう一つの重要な役割は、降った雨水を町中にあふれさせることなく河川や海へ安全に流すことです。市街化によって地表面がアスファルトやコンクリートに被われると、雨水は地中にしみこまずになります(都市化)。下水道によって雨水を安全に排除することだけではなく、雨水の浸透・貯留に取り組むことも下水道技術者の役割です(図-4)。


図-4 平成15年台風10号での国道2号の浸水

⑤下水が生み出す資源

下水処理から何も生産されないように見えますが、下水処理場は多くの利用可能な資源を生み出す工場です。下水処理場からは次のような製品が生まれます。

  • 処理水:洗浄用水・水洗便所用水・せせらぎ用水などに使われます。
  • 汚泥:下水処理場で下水から絞り出される泥は舗装ブロックなどに使われます。
  • 熱:下水処理場や下水道は多くの熱を持っており、暖房などに使われます。
  • 電気エネルギー:処理水の流れを利用して水力発電が可能です。
  • バイオ天然ガス:下水から発生するメタンガスを利用して、自動車などの動力エネルギーに利用されます(図-5)。

図-5 東灘処理場のバイオ天然ガス精製装置

下水によって資源・エネルギーの再利用が可能となります。
下水道技術は地球温暖化防止に大きく貢献できる技術です。

神戸市住宅都市局計画部
・三島功裕氏

神戸市住宅都市局計画部 三島 功裕 氏(1984年卒業)

神戸大学を卒業後、神戸市役所に入庁し、河川の仕事、道路の仕事、都市計画の仕事など、様々な仕事に携わりました。現在、神戸の都心三宮の再整備について担当をしています。少子・超高齢化の進展による人口減少のトレンドは神戸市においても始まっています。将来を見据え、人口減少社会に相応しい都市像を構築していくことが、我々に課せられた大きな責務であり、やりがいでもあります。その中、都心が魅力的で人を引き付けることは、都市が安定成長していくために不可欠です。

そのため、神戸の都心を大胆に活性化する「将来ビジョン」、さらにJR 三ノ宮駅を含む三宮周辺地区の「再整備基本構想」の策定に取り組んでいます。我々が策定した「将来ビジョン」「再整備基本構想」が具現化し、多くの人が都心三宮を回遊している様を想像するだけでワクワクしてきます。神戸が、選ばれるまちとして、また、市民が世界に誇れるまちとしてさらに進展していくよう頑張っています。

暁木会

暁木会とは、市民工学科、市民工学専攻、およびこれらの前身となる学科等の卒業生・修了生などで組織される会です。 同窓会組織としての役割を果たしているほか、さまざまな活動を行っています。卒業生・修了生は暁木会に正会員として属し、社会に出てからも同級生および学科・専攻とのつながりを維持していくことになります。 暁木会のホームページはこちら